令和7年9月7日開催
2025年9月7日(日)、東京都立川市近郊にて武器術の広域指導者資格認定合宿が開催された。今回の合宿で学んだ事がすぐに自己の上達に繋がる訳ではないので、それらが今後の稽古に於ける指針となる事を念頭に置いて指導と研究が進められていった。
まずは基本打ちについて研究をした。武器の持ち方や扱い方などについて、基本的な部分の説明を受けた。いつも当たり前のようにやっているから当然できていると思っていた事ができていなかったり、いつの間にか間違ったやり方で稽古を進めてしまっていたりと、気づかされる事が多かった。
指導研究の中でも特に興味深かったのは、身体と武器を一体とし、武器で強く攻撃するのではなく相手の中心へ力を通して相手を崩すように攻撃するという事であった。ちなみに武器が当たった所に強い力を加えようとすると、両肩や両腕に力が入るので身体と武器がバラバラな動きになってしまうから注意が必要である。しかしながら、相手の中心へ力を通すやり方がまだわかっていないので、まずは武器と身体を一体とする所を糸口として研究を進めれば、力の通し方も見えてくるのではないかと思った。

次に相対打ちについて研究をした。参加者のうち2名が相対打ちをする様子を他の参加者が客観的に見て意見を出し合いながら、順番で研究を進めた。相対打ちでは相手がいるために、どうしても基本通りの動き方が疎かになりやすい。いかに基本打ちでの動きと同じように動けるかが大切なポイントとなってくる。
実際に参加者の動きを見ていると、振りかぶった短刀の握りが強くなって切っ先があがっていたり、捌きに意識が多く行って剣の振りかぶりが小さくなっていたり、水車勢の回転が小さくなっていたりする様子が目立っていた。自分でやっている際も基本打ちの時に比べて腕で武器を扱っていると感じる事が多かった。それも主観的に感じる基本とずれた武器の扱い方のサインではないかと感じた。また、受けの攻撃が実際に届く環境での緊迫感がある稽古の大切さについても指導を受けた。

相対打ちをする時によく見られるのは、間合いを広くとっているために受けが踏み込んでも掛けに攻撃が届いていない状況である。これだと掛けは捌かなくても当たらない中で形式的に捌くようになるため、緩慢な捌きが身についてしまうのである。型通り上手で綺麗な捌きができれば良いのではない。実際の状況に合わせた有効な捌きが出来るようにならなければ意味がないはずである。
しかしこれには矛盾点もある。それは踏み込める距離と練度についての部分である。稽古の練度が上がるにつれて踏み込める距離は長くなってくる。逆に言えば初心者ほど短い距離しか移動できないため、相対打ちに於けるお互いの距離はおのずと近くなる。しかし捌きは近くなるほど難しくなるから初心者ほど広い距離で稽古した方が良いという事になるのである。そこについては稽古する本人が有効な良い位置関係を見つけ、工夫して稽古していくしかないのではないかと思った。
そして相対打ちの指導で興味深かったのは、受けの取り方についてである。受けを取る際、自分の番の稽古ではないという思いから、ただ機械的に決まった攻撃を繰り出してしまいやすい。しかし受けの番でも得るものが多々あるので、悪い言い方ではあるが、気を抜いて臨んではならないのである。受けとは自分が攻撃した時に自分の攻撃が相手に届いているか、相手はどんな捌きをしているのかなど、色々な情報を観察する事ができる貴重な機会なのである。

最後に武器取りについて研究をした。まずは日々いくら武器取りの稽古をしているからといって、武器を持った相手に遭遇したらまず逃げるようにしましょうというアドバイスから研究はスタートした。それほど武器を持った相手と戦うのは危険な事であって基本的に避けるべきなのである。
本題の技の研究となると、課題はやはり「相手の体幹中枢に合気力を通していく」ための研究となった。そのためには相手と接触する部分を非常に繊細に扱う事が大切になってくる。ヒントになる言葉はそれだけだ。そこから先は感覚的な話になってくるので、文章や言葉で説明するのは難しくなる。だから各々が稽古でいろいろなやり方を試し、その結果をもとに代表範士に質問を投げかけながら自分の感じた事が有効な感覚なのかを確かめつつ研究をしていた。ただし、感覚的だといってもその力の出し方は単なるイメージだけのものではない。なぜなら代表範士に技を掛けられた人は物理的な力が自分の中心に流れ込んでくるのを感じているからだ。その事から代表範士の技は自己の体内に於いて実際に力の流れを作って相手へ流し込んでいるものだと考えられる。
現段階の自分の研究では仮説ばかりで、力の流れを意識してみてもまだイメージの域を出られていないのが現状である。しかし代表範士いわく、はじめは机上の空論で良いのだそうだ。色々な仮説を立てて試し、一番良いと思った方向へ進む。そしてもしその道が間違っていたらいつでも別の道へ進めばよい。その繰り返しによって机上の空論だったものが現実になってくるのだそうだ。その言葉を胸に、基本打ちにせよ相対打ちにせよ武器取りにせよ、自己の経験に基づいた仮説を立て、それを検証する事を繰り返しながら今後の稽古に取り組んでいこうと思った。
<合気道S.A. 広報部>
コメントをお書きください