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新合気術 広域指導者資格認定合宿レポート

令和7年6月15日開催


 2025年6月15日(日)、東京都立川市近郊にて新合気術の広域指導者資格認定合宿が開催された。新合気術は今年1月からスタートしたので、スタート後に初の合宿開催であった。

 新合気術とは、合気道S.A.の合気道組手や型稽古から培った技法で、相手が見切った刹那、または自らが相手とすれ違いざまに仕掛ける技法などが集約されている技術体系である。

 その主な特徴は、相手の体幹中枢を直接崩していくという点だ。一般的な合気道では末端からアプローチして相手の体幹中枢を崩していくが、新合気術では末端は関係なくダイレクトに体幹中枢へ効くので、従来の合気道とは異質なものである。故に合気道の技と区別するために、技の名称はその技の特性を表しながら新たなものが付けられていた。例えば「投げ」や「極め」ではなく、「抑え」や「落とし」を使った名称になっていた。

 先述では合気道とは異質だと述べたが、正確には新合気術の術理の方がむしろ本来の武道武術的な合気道の在り方だと言った方が良いかもしれない。なぜなら一般的な合気道では、飛んだり回ったりする派手な受け身を取る事が出来るからである。派手な受け身を取れるという事は、受けの下半身が生きているから出来る事なのあって、受けは反撃しようとすれば出来てしまう状態にある訳である。すなわち下半身が生きているという事は、受けは実際には崩れていないという事になる。本当の意味で相手を崩すためには、言い方は悪いが、下半身を殺さないといけない。下半身を殺されると相手は反撃出来なくなるし、受け身も取れなくなる。だから新合気術の技は、受けを取らせるためのものではないので、技を掛けられる側の事を「受け」ではなく「相手」と呼称していた。

 触れた刹那に相手が受け身も取れずに崩され倒される。そういう技こそが本来の合気道の技だと言う著名な先人もいらしたはずだ。そして合気道に限らず武道全般に於いて、刹那に相手を無力化するという事がそもそもの目的ではなかっただろうか。そのように考えていくと新合気術の術理は、武道武術的に見て非常に理にかなったものであると言えるのである。

 今回の合宿は開祖の櫻井文夫から新合気術の特徴や今後の稽古をしていくうえでのポイントなどについて説明を受けた後、それぞれの技を通して研究をしていった。研究は1対1でひたすら技を繰り返すのではなく、必ず3~4名に分かれて他の人の技を客観的に観察し、気づいた点を指摘する人間を置く形で進められた。

 参加者達は今まで稽古してきた技とは違う「体幹中枢への直接的なアプローチ」という部分に対して、特に戸惑いが多かったようだった。その結果、お互いの技を観察して指摘し合うというよりも「どうしたら直接体幹中枢へアプローチ出来るのか」という点について意見交換をしながら一緒に答えを探している姿が目立っていた。

 自分でやってみても、今まで研究してきた「つき貫ける合気」よりも更に進化した内容だと感じられ、ますます難解になったというのが正直な手ごたえだった。実際に開祖に技を掛けてもらうと、あきらかに自己の体幹中枢を直接攻められるような感触を感じながら、受け身も取れずに地面へ潰されていく体験は本当に不思議で、理解が追いつかないものであった。しかしながら、現実に人間が体現している技法なのだから必ず答えはあるはずなので、難解ではあっても出来るようになる道は必ずあるはずだと思った。

 基本動作についても従来の稽古とは変わっている印象が強かった。一番の変化を感じたのは、より自然体な立ち姿を基本としている所だ。身体に力を入れるような、あからさまに構えようとする姿勢ではなく、「立ち姿がすなわち武」を目指す事を良しとしていた。

 そして、身体全体からどのような力を発していけば良いのかを探る事が最も大切だという話もとても興味深く、今後の基本動作の稽古に於いて課題となってくると思った。

 新たに始まった新合気術。動いた刹那に相手を崩し倒す。そして場合によっては捌くだけで相手を無力化し、技を掛けるまでもなく崩してしまう事も出来る。この不思議な感覚は実際に技を受けてみないとわからないと思う。実際、他人が掛けられているのを見ているだけだと何が起きているのか解らなかった。更に理解を深めるためには、今後も継続的に日々の稽古や合宿に参加し、自身で体感しながら学んでいく必要があると思った。

<合気道S.A. 広報部>