令和6年11月3日~4日開催
2024年11月3日(日)と4日(月)の2日間にわたり、立川近郊にて体術の広域指導者資格認定合宿が開催された。
技を掛けるための力を出す研究、相手の体幹中枢を見る目の養い方、立体的に動く研究を主なテーマとして指導と研究は進行していった。
まずは基本動作の指導研究から始まった。基本動作を初心者に指導する場合、姿勢や手足の動きなど末端部分の動きについて言及するものだが、基本動作の本質とは、初心者に指導する事とは真逆のものだった。それは自身を一つの塊(=個)として動くために、身体内部のどこからどういう力を出していくのかを研究し養成していく事が目的で、末端が動くのはそういう力が働いた結果にすぎないのである。
そうした根本を踏まえ、参加者は数人一組となってお互いの動作を観察しあい、気づいた点を指摘しあっていった。他の人の動きを観察するというのも相手の体幹中枢が見えるようになるためには有効な手段なのだそうだ。だからこの後の研究項目でも観察しあうやり方で研究を進めていった。
摺足系の動作では、全体的に足から出ようとする動きが目立っていた。全身が個として動かなければならないのだから、当然その動きは良くない。
もちろん本人は個として動く事を念頭に置いてやっているのだが、周りから見ると、自身の中心部が動かないまま足を出し、その足に引かれる形で中心部が移動しているのが一目瞭然であった。第三者の目線から己の動きを見てもらう事の大切さが身に染みてわかった。
回転系の動作では、球体をイメージした立体的な動きが要求された。もちろん先述した摺り足系でも立体的な動きは必要なのだが、回転系の方が顕著だ。
そしてなぜ立体的な動きが必要なのかというと、合気道の崩しとは縦の崩しだからである。だから軸の動きでは意味が無いのだ。軸で動くと、それは平面的な動きになって横へ振り回すだけになるので、やらせでない限り合気道の崩しは実現出来ない。
基本動作とは技を掛けるために必要な力の出し方の養成であるから、立体的な動きを念頭に置いた稽古が必要になるのである。
回転系の動作を研究していくと、自分がしている球体のイメージがあやふやである事に気づいた。立体的な動きをしようという頭はあっても、それぞれの動作ごとに回転する横の動きと上下の動きがバラバラだったり、上下の動きが全く無いまま動作していた。
回転する横の動きと上下の動きが同時にバランスよく出来ている状態が立体的な動きであると考えられるので、今後はそれぞれの動きをバランスよく出せるようになるための身体の使い方を研究する事が必要だと思った。
次に体捌きについて指導研究がおこなわれた。体捌きは相手の攻撃が当たらないためにする守りの動きではない。体捌きとは自分から攻撃していくためにする攻めの動きである。
だから、捌く時には能動的に自分から相手へアプローチしていく必要がある。そのために例えば、相手の中心へ入り込んでいくように動く事、自分から先に当て身を入れるつもりで動き始める事、といったポイントが挙げられる。
実際にやってみて難しかったのは、自分では前に出ているつもりでも、出る方向とタイミングによっては、結果的に後ろへ下がる動きになってしまうという所だった。後ろに下がる動きになってしまうと、当然相手から離れていく(=逃げる)動きになるので、相手はその動きを追えるから、捌いた方向へついてきてしまう。だから相手から離れず、確実に前へ出る動きにしなければならない。
しかし、相手の攻撃に当たりたくないという気持ちが、相手の中心へ入り込む動きを邪魔しているようだった。正直な所、自分から当て身を入れていくように動くと、結構相手の攻撃に当たってしまったので、なおさら当たらないように逃げる動きになっていたのかもしれない。しかも無意識に身体が反応するのだから始末が悪い。
今後は色々なやり方を試しながら動き方のポイントを見つけ、それを感覚的に身につける必要があると思った。なぜなら無意識の部分を改善していくには頭で考えていてはダメだと思ったからである。
続いて、ここまでの指導研究を踏まえ、様々な技の研究をした。中でも特に代表師範が見本でおこなった一カ条が印象的だった。
それは『体捌きがちゃんと出来ていれば、そこで崩し倒せる』という内容であった。実際に代表師範が捌いた時点で相手の姿勢は完全に崩れており、一カ条を掛けるまでもなく、自分から俯せに倒れていった。さらにその後、どの技でも捌きによる崩しは有効で、技を掛けられる前に相手は倒れてしまった。
私にとって捌きとは技に入るためのアプローチとして認識していたので、その捌きはとても真新しく目に映った。しかし考えてみれば、技とは本来一挙動なのだから、捌きが崩しになるという方が理にかなっている。アプローチしてから技を掛けるのであれば、それは二挙動になるからだ。もっと基本と理合の理解を深めなければならないと思った。
その他にも、『二カ条は肩につけなくする』『三カ条や四方投げは相手の脇をすり抜けなくする』など、より実戦的な技の掛け方への変更点が発表された。
試合を通した実戦での研究を踏まえると、肩につけるやり方も脇をすり抜けるやり方も、自由攻防の中ではその形まで持ってくのは難しい。なぜなら、その形になる前に相手が抵抗したり逃げたりしてしまうからだ。これは決まり事の中でおこなわれる型稽古だけでは気づけない事実だ。ただし、もちろん型稽古も大切である事は言うまでもない。ゆえに試合と型稽古はどちらも必要であり、それらの相互作用の大切さを改めて感じた。
代表師範の技は最近特に進化し、益々不思議なものになってきている。打撃を例に挙げてみても、強く打つのではなく相手を崩すために力を透す打撃に進化している。その他に於いてもかなり早いスパンでやり方は進化しているので、しっかり理解するためにはこまめなアップデートが必要だと感じた。次回の合宿参加を念頭に置き、自己の身体運用について研究を重ね、次回またその答え合わせをする事によって、こまめなアップデートをしていこうと思う。
<合気道S.A. 広報部>
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