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実戦合気道 広域指導者認定合宿レポート

2024年5月4日~5日実施


 2024年5月4日(土)から5日(日)にわたり、八王子近郊にて体術の広域指導者資格認定合宿が開催された。今回はイギリスからの参加者もおり、新鮮な雰囲気の中で合宿は進行していった。

はじめに代表師範から説明されたのは、「力の出し方によってその動きの形が出来上がる」という事であった。

基本動作や技の稽古をする際、その形にこだわって稽古をする人は多い。もちろん初心者が基本動作や技を覚える場合は形から学ぶ他ないのだが、ある程度稽古を積んだ者がずっとそのままだと、おそらく80歳まで稽古しても上達するのは難しいだろう。

 ではどのような点を大切にしていくべきなのか。それは「どんな力をどう出すのか」という点である。そして力の出し方が正しければ、形は自ずと正しい形になっていくものである。

つまり、稽古に於いて最も留意すべきなのは力の出し方であり、形はその結果にすぎないという事なのだ。

 代表師範の話を聞いてその通りだと思った。自分が弟子だから妄信するわけではない。実際に末端を意識していては、相手に抵抗感を与えてしまうばかりで技は掛からないという事を、今までの稽古を通して十分に体感してきたからである。

掛かる技を使うためには相手の中心というか一番自信を持っている部分を攻めていかなければならない。

 しかし、形ばかりを気にしていると、例えば「腕や足の形はこうだ」「胸は張る」「中心線を意識する」といったように、どうしても部分的な事を気にしながら整えていくようになってしまう。それでは末端的な発想にしかならないから、技は使えないものになってしまうだろう。だから末端ではなく、相手の中心部を攻められるような力の出し方が一番大切になってくるのだ。

 代表師範の説明を踏まえ、基本動作から研究をはじめた。ただ繰り返しやるのではなく、3~4人組に分かれてお互いの動きを観察し、指摘し合いながら、いわゆる「脳に汗をかく稽古」を進めていった。

 今回の合宿でも案の定、自分で正しいと思ってやっていた事が、周りから見ると違っていたり崩れていたりする点が多かった。今度こそ崩れないままやり続けようと思っていても、稽古の中で段々と生まれてくる自分の偏った考えに支配され、崩れていっているのだと痛感させられた。基本に立ち返る機会は本当に大切である。

 次に手の打撃について研究をした。最近の合気道S.A.では、掌底による攻撃の方が合気道に於ける力の出し方に適しているという観点から、拳による打撃を無くして掌底による打撃のみで、正面打ち、顔面打ち、前打ち、回し打ち、回し叩きとなった。

ちなみに回し叩きとはフックに変わる掌底攻撃で、半身になりながら掌底の内側で相手の頬骨を打つといったものである。

 そして最も大きく変わったのは、強く打つ打撃というよりも、相手を崩すための打撃をするようになった点だ。崩すための打撃とは、前から打っているのに相手が膝から前方向へ崩れて倒れるような打撃である。

 実際に代表師範から打撃を受けると、合気道の技を掛けられた時と同じ感じで倒された。それは俗に言う膝カックンを受けて尻もちを着く倒れ方に似ていた。姿勢によって力の入り方は人それぞれなので、打撃を受けた人ごとに倒れ方は少しずつ変わっていたが、皆一様に体勢を崩されていた。

 受けた力から察するに、力の出し方は技に於けるそれと同じだと感じたので、これも力の出し方がわからないと体得するのは難しいと思った。

しかし逆に、これらの打撃を糸口として力の出し方のヒントが得られ、技へと生かせる場合があるとも考えられるので、技と平行して研究を進めていくべきだと思った。

 技についての研究では、それぞれのチームで主に力の出し方について様々な議論をしながら研究が進められていた。

 力は代表師範が技を掛けるとすんなり通るのだが、参加者たちがやってみると相手を押してしまうばかりで力は通らなかった。その違いは何なのか到底すぐにわかるものではないが、人間がやっている事なのだから答えは必ずあるはずだ。

代表師範から技を掛けられた感触に何かのヒントがあるのではないかと思い、力の流れる方向、自分や他人がどのように倒れているかなどをヒントと捉え、その内容を探りながら研究を進めた。

日々の稽古での力の出し方については、基本動作を工夫して稽古し、技に於いてその正否を確かめていくのが良い方法ではないかと思った。

 

 合宿に出たから技術が上達するわけではない。合宿は上達するきっかけを掴むための方法論を学ぶ場であると代表師範は話していた。

 確かに、今回の合宿中にめざましく進歩した所は正直無かった。でも得られた「上達するための方法論」は沢山あった。それらを今後の稽古へと生かし、焦らず腐らず時間をかけて、単なる形ではない技の本質について研究を深めていこうと思った。

 昨今、巷には手頃に手早く出来るような技法がたくさん出回っている。正直、手近な技法は末端的な発想のものばかりだ。にもかかわらず、出来ない自分に直面するとなおさら早急に答えを求め、水が高い所から低い所へ向かって流れていくが如く、その方向へ流されてしまいやすい。しかし、そこに甘んじ満足してしまうと、そこまでで自分の技が止まってしまうように思えてならない。だから焦らず腐らず、時間をかけて進んでいく事が大切なのである。

<合気道S.A. 広報部>