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「つき貫ける合気」研究会レポート

令和5年1月15日開催


2023年1月15日、東京都立川市近郊にて「つき貫ける合気」研究会が開催された。

今回の研究技は天地投げ、下段腕がらみ、一ヵ条抑えの3つであった。どの技に於いても、その技の基本的な崩し方から掛け方までやった後、すれ違いざまに自分から掛けていくやり方の研究をした。

一般的に合気道の技は、相手が何かしてきた所から始まるものと思われている事が多い。しかし実は自分から掛けていくやり方の方が、より実戦的で有効な技であると言える。なぜならば、どうやって攻撃してくるか判らない相手の動きをわざわざ待っているより、自分から攻めていく方が実戦的であり、武道的だと言えるからである。

例えば両手持ちの技を掛ける場合、型稽古通りに自分が両手を出したからといって、素直に両手を取ってきてくれる殊勝な敵がいるだろうか。自分が相手の動きを誘ったとしても、相手は当然蹴ってくるかもしれないし綾手を取ってくるかもしれない。殴ってくるかもしれないしトリッキーに目潰ししてくるかもしれない。要するに受けの動きとは受け次第、受けの自由なのである。

型稽古の最中に受けの取り方が悪いと注意している人もいるという話を聞く。勿論それは、その場での成り行きや稽古中の意図があっての事なのだろう。しかしどのような背景があるにせよ、自分の技が掛かりやすくなるように受けの動きを矯正した稽古を続けていくのなら、あなたは実戦の最中にも相手に攻撃の仕方を指定しながら戦うのですか?と問いかけたくなる。それに、わざわざ両手を持たせてガッチリと固められた所から苦労して技を掛けていくくらいなら、そんな状況になる前に相手を倒してしまった方が良いはずである。

 

しかし、これは先述した受けの動きについての話と合わせて、型稽古しかしない稽古ではなかなか見えてこない事であり、試合を取り入れた稽古をしてこそ見えてくる事実である。試合では、抵抗する相手へ技を掛ける場合には、自分から積極的に技を掛けに行く事が非常に有効となる。実戦の動きの中で相手に動きを抑えられてしまうと、お互いの力に大差が無い場合であっても、型稽古で出来たようにはその膠着から抜け出せない事がほとんどだ。

では型稽古の中でも実戦的で有効な技を稽古するためには何が大切かというと、それは「受けの取り方」である。これまで散々受けの取り方を指定するなと言って来たのに、このように言うと矛盾だと突っ込まれそうだが、先述の話とはニュアンスが違う。それは先述の話は「技が掛けやすくなるための受け」であるのに対し、「掛けが進歩するための受け」を取るべきであるという点である。

その受けとは、技に掛かる事を前提に相手へ掛かっていかない受けである。まず、技の動きを予測して先に動かない。受けはただ身体を一つの塊にして掛かっていき、その後は姿勢を崩さないよう、どっしりと構えて何もしない。その後どう崩れていくのかは掛けの動き次第になるようにする。そして、そのように受けを取る事によって掛けが正しい技の在り方を理解し、技が進歩していくのだ。この時に受けの余計な動きがあるとその邪魔をしてしまうのである。

しかし、ここで受けが更に気をつけなければならないのは、「何もしない=掛からないようにする」と解釈し、始めから逃げるように腰を引いたり、途中で掛からないように変な力を出したりしないようにする事である。そうしないと掛けの技の進歩を妨げるばかりでなく、受けにとって危険な受け方になるからである。今まで私は、受けとはただ自由にやって良いものだと思っていたし、受けがどんな状態であっても掛からなければ本当の技ではないと思って来たので、受け方や姿勢に気を使うなど、やらせになるからもっての外だと考えていた。

 

しかし、今回の研究会を通して掛けが進歩するための受け方があるという事を知り、特に印象に残った。そのため、今回は受け方へ注意を置いて受けを取るように心掛けた。しかしながら気にしてやってみると、気をつけてやっているにも関わらず自分が無意識のうちに技の動きへ合わせた受け方をしてしまっている事が判った。

だから今後の稽古に於いては、相手の技が進歩するための受けの取り方を念頭に置いた受けが取れるように研究をしていこうと思った。

<合気道S.A. 広報部>