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実戦合気道 広域指導者認定合宿レポート

令和4年5月3~4日実施


令和4年5月3日・4日の2日間、東京都立川市近郊において合気道S.A.主催による“広域指導者資格認定合宿”が開催された。今回の合宿では初参加者が3人とコロナの影響が小さくなった事で全国各地から指導者が集まり、賑やかで新鮮な合宿となった。

 

今回の合宿のテーマは“力の発生箇所を意識する!(何処から力を発生させるのか)”という事であり、各々がそのテーマを念頭に“頭に汗をかく”合宿となったのである。どうしても技を掛けようとした場合、小手先の技術や力で何とかしてしまいがちになるが、そうであると未経験者や素人には技が掛かるが合気道経験者・特にS.A.門下生のような演武ではなく組手や実践的な稽古を行なっている人達には力の動き・方向を読まれてしまい容易に抵抗を許してしまう事が多い。

“如何に相手に力の動き・方向を教える事無く技を掛けられるか!”という点に皆頭を悩ませているのであるが、その悩みを解決するヒントが“力の発生箇所”であるという。実際に櫻井代表師範の技を受けるとよく理解出来るのであるが、こちらが本気で抵抗しようとしているにもかかわらずあっさりと技を掛けられてしまう。代表師範の技にまるで反応出来ないのである。余計な緊張や力む事も無く笑顔さえ浮かべたまま(決して忖度している訳ではなく身体に余計な力や緊張が入っていないのでそうなる)力を通され倒されてしまう。この不思議な感覚は実際に技を受けてみないと到底理解出来ないであろう。S.A.の動画も色々と出ているがこればかりは見るだけではまず無理である。そういった代表師範の技の秘密が“力の発生箇所”であるという。

この辺りの事については個人個人で表現や理解の仕方が異なったりまた説明も難しい為、詳しく知りたい場合には実際にS.A.の講習会や合宿といったもので実際に代表師範の技を受け、また解説を聞いてみる事をお勧めする。

さて前置きが長くなってしまったが今回の合宿である。初参加者の3人はそれぞれが有段者であるという事も踏まえて通常の合宿内容となった。まずは構え・基本動作からである。基本となる構えであるが…立ち姿・姿勢・力の入り方・力の発生箇所等々、注意点は多岐に渡る。通常の稽古においては限られた時間の都合等の諸事情によりそれほど注意して深く掘り下げる事は少ないのであるが、指導者合宿においては基本の基本からのシッカリした見直しを行う。

代表師範からの解説の後、今回もグループに分かれ客観的な目での相互チェックを行う。自分の主観と他人の客観的な目とでは驚く程の相違があり、自分では中々気づき難いような癖や間違いも指摘を受ける事で修正する事が出来るのである。勿論、代表師範や指導者レベルの方々の厳しい目に晒されるという大変緊張する時間ではあるが、客観的な目での判断・診断というもので得られるものがその大変さ以上に大きいのである。

合気道S.A.の特徴なのか参加者達の気質によるものなのか、合宿においては本当に基本の確認にシッカリと時間が取られており、厳しいながらもここでしか得られないような貴重な経験・時間である。

 

構え・基本動作にシッカリと時間を取った後、体捌きへと進んで行く。体捌きについても構え・基本動作と同様、通常の稽古においては時間等の都合もありそれ程突き詰めたところまで行う事は少ないのであるが、合宿においては基本的な事柄の確認や“誘い・呼び込み”といったもの、更により実践的な動きに至るまで代表師範の詳細な指導の下かなり濃密な稽古を行ったのである。

ここまで構え・基本動作・体捌きまでの確認が終わり、いよいよ技に入る。今回は全員が有段者という事もあり基本技を級技・初段技・有段技と順序立てて行っていくのではなく、それぞれの技について本質的なところから相手が抵抗している場合への力の通し方といった応用編というところまで確認しながら行っていったのであった。具体的には“受けが力を入れて固めた場合・逆に力を入れずにプラプラの場合・掛けに対して抵抗している場合”等である。

常日頃、代表師範は“受けの取り方・持ち方は相手の自由であり、力を入れていようが抜いていようが、はたまた抵抗していようがそれに対して自由に技を掛けられなければならない。自分の弟子にしか・後輩にしか掛からないような技など意味が無い!”とよく仰っておられる。合気道S.A.の稽古体系はそのような理念の下に組み上げられており、日々研鑽を積み重ねているのであるが…そうはいっても中々現実は厳しく思うようにはいかないものである。

それらの悩みを解決するヒントが“技を掛ける時に何処から力を発生させるのかという力の発生箇所”であるという。(その前提として手に余計な力を入れない・握らない・掴まないといった注意点も存在するがこの場では割愛させていただく)それにより単なる小手先の力に頼るのでなく(力で倒せるのであれば代表師範はそれも技であり否定はしない)相手に力を感じさせず、また受けがどのような状態であっても技は容易に何度でも掛ける事が可能であるという。

 

また代表師範は“派手な受身が取れるような技は本物の技ではない。本物の技を受けると派手な受身を取るような余裕は無くその場で腰や膝から落とされるものだ!”ともよく仰っておられる。確かに代表師範の技を受けるとそのまま腰や膝から落とされてしまい、派手な飛ぶような受身を取る事は出来ない。即ち相手に反撃をする余裕を与えないという事である。

例えば小手返しは相手の片手に技を掛けるものであるが、代表師範は身体全体を崩して相手の空いてる手をも瞬間に殺してしまい反撃を許さないのである。勿論その段階に至るまでには様々なステップがあり一朝一夕にはいかないものであるが“出来る師について正しい稽古を積み重ねていけば将来出来るようになる!(かもしれない)”とは代表師範の弁であり、我々はその言葉を胸に日々稽古に励んでいるのである。

このように濃い内容で時間はあっという間に過ぎていってしまい、初日の基本技は1ヶ条から正面入り身投げまでとなった。

さて2日目である。前日同様、構え・基本動作・体捌きまでの確認をシッカリ行い、次はS.A.独自となる打撃技である。S.A.の理合に基づいて作られた打撃技は空手やキックといったものとは異なりS.A.特有のものである。

これについても代表師範の解説の後、またグループに分かれ客観的な目での相互チェックを行ったのである。その後は基本技の続きとなり、上段腕絡みから小手返しまでの全ての基本技を行ったのであった。

基本技が全て終わった後で、今回は更に天地投げ・四方投げ・呼吸投げ・変形の四方投げ等の技についても解説・稽古を行い、2日間に渡る内容の濃い充実した合宿を終えたのであった。

 

このように内容の濃い合宿であったが、この合宿で学んだ事が直ぐに出来るようになる!という事はまずない!

薄皮を1枚1枚積み重ねていくような地道な研鑽が必要であり、地力の底上げというように時間も必要となるのだ。しかし合宿というものは普段の稽古における答え合わせであり、また稽古の指針を示すものであると考える。

S.A.なら門下生のみならず他流派の方々を含め、今の稽古に疑問・行き詰まりを感じているならば、勇気を出して合宿に参加してみては如何だろうか!あなた達が求める何かがそこには存在するかもしれない!と考える次第である。

<合気道S.A. 広報部>