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オ-プント-ナメント実戦合気道選手権大会

令和4年3月20日開催


総評

令和4年3月20日、実戦合気道選手権大会が東京都昭島市近郊で行われた。

今回の大会も軽・中量級のトーナメント、重量級のトーナメントそれぞれで試合を進め、各トーナメントの優勝者で決勝戦を行い、総合優勝を決めるという形式である。

左から 平畠幹彦選手 櫻井文夫代表師範 木村圭吾選手

今回の大会ではベテラン選手による活躍と、二回目出場の選手の活躍が見られた。軽・中量級の第一試合は二人のベテラン、木村選手と東山選手の非常に見ごたえのある試合が展開された。東山選手は相手の体格やスタイルに左右されることなく自分の技に入れる崩しながら入ることのうまい選手で、木村選手は相手をよく観て自分から動いて掛ける、相手の動きにカウンターで掛ける、を変化できる選手である。長い年月切磋琢磨してきた二人だけあって、お互いが止まることなく技と技での攻防が繰り広げられた。試合後半では木村選手が優勢となる時間が増えていったが、東山選手の動きに対してのカウンターを前半で見せておいて、後半では木村選手は自分からの動きでスタートしてカウンターをさせて、そのカウンターを狙っていた。木村選手はそのまま部門優勝してしまう。

木村圭吾選手(左)

他に目立っていた桜井選手は相手の動きに対して色々なタイプのカウンターを取るという戦い方を見せた。打撃に対しての対応や決め技だけでなく、投げ技や関節技ほぼ全てに対してカウンター出来るという事は普段の組手でもその全てを使う相手と幾度となく練習しているであろうことが見て取れた。しかしカウンター的な動きはいわゆる「後の先」と呼ばれ合気道的に使いやすいものではあるのだが、どうしても相手の攻撃が先に発生してしまっている事実が存在する。相手の動きがあって初めて成立する技をメインとしてしまうと、どうしても相手に動きに対しての対応に追われてしまうため、力や速度、体格やスタミナで勝る方が有利となりやすい。ではそうさせないためにどうするかといえば、やはり自分から技を仕掛ける必要がある。それもかかるかかからないかわからない博打的な仕掛けではなく、目的をもって攻撃を仕掛けていって自分の技に持っていく形としたい。

 

その点において、田島選手は相手の攻撃全てに対し側面に移動して自分の攻撃に持ち込むという側面攻略を一時期使っていた為、相性はあるにせよ田島選手の動きで場を支配できていた。最近は側面攻略と正面攻略を切り替えていくスタイルとなったことで、支配的ではなくなってしまったことが惜しまれる。今大会で久しぶりに出場した平畠選手は、無差別級の中では最も体重が軽かったにも関わらず、もっともアグレッシブかつ意欲的に自分からの攻撃で技に入ろうとしていたのが見て取れた。桜井選手と同じく、普段から打撃や投げ、関節技ありきの組手などをしていることを感じさせる鋭い踏み込みや、相手の攻撃を警戒しすぎて萎縮した状態にならず前に出られる精神的安定も感じられた。重量級トーナメントを制し、総合決勝においてもそのスタイルは崩れる事がなかった。

平畠幹彦選手(左)

軽量級トーナメントを制した木村選手は、自分から掛けに行く、相手の打撃の瞬間に掛ける、カウンターを取る、といった戦い全てが出来る上に、自分から掛けに行ったものにカウンターをさせて、それを狙うといった事も出来る。今回の平畠選手がアグレッシブに前に出てくるので、そこに対してのカウンターを狙いすぎてしまったのか、消極的と取られてしまい、本戦で攻撃の手を緩めることなく攻め続けた平畠選手に敗れた。木村選手は初戦のように持ちうる技法全てを駆使することの出来ればよかったのだろうが、それを一切させずに前に出て仕留めた平畠選手の勢いが光った大会であった。

とはいえ課題も存在する。果敢に攻めていく事は素晴らしいのだが、前進する際の戦略があまり無い為に被弾率そのものは高かったため、打撃での攻撃力が高いタイプの選手が出てきた場合に大ダメージを受ける可能性がある。また、技に入り込んでから、ある程度は形になるものの、決め切れずに対応されて体制を崩してしまう姿も散見した。技を掛けようとする瞬間や技を掛けている最中などすべて、ある程度の合気道組手をやっている者にとっては技を掛けさせておいてカウンターを取りやすい場所である。ましてや決め切れてない動作の隙となれば、より簡単な狙いどころとなってしまうのだ。被弾せずしっかり相手の間合いに入り込み、自分の技を掛けて仕留めることが出来るようになった時、平畠選手は合気道で戦っているとさらに実感できるだろう。次回の大会も楽しみである。


試合結果

令和4年3月20日(日) 於 昭島市近郊

  • 総合優勝  平畠 幹彦 (合気道S.A.大宮)
  • 部門優勝  木村 圭吾 (合気道S.A.品川)