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「つき貫ける合気」研究会レポート(A)

令和4年2月27日開催


2022年2月27日(日)立川近郊にて『つき貫ける合気研究会』が開催された。

今回テーマとして取り上げられた技は、天地投げ、下段腕がらみ、一ヵ条抑えの3種であった。

どの技の説明に於いても、「崩し」の大切さが感じられる内容であった。共通するポイントは、相手と接した部分を忘れ、相手の前足を床へ縫いつけるように誘導するという事であった。

 

上記のポイントを見て「足が床へ縫いつけられたら受け身が取れなくなるのではないか」と思った方もおられるかもしれない。そしてその受け身とは、一般的に見られる前回り受け身や飛躍受け身をイメージしているのではないだろうか。しかし本来、合気道の技を掛けられたなら、前転したりトンボを切るように技を受ける動きは不可能なはずなのである。なぜなら受けが向きを変えたり飛べたり出来るという事は、受けにまだ体勢を変えられるだけの余裕があるからであって、それは崩しが成立していないという事を示唆しているのである。そして崩しが成立していないという事は、受けは技に掛からないように耐えたり反撃したり出来る状態なのである。故に相手が回ったりトンボを切るような受けを取る技については、受け掛け双方の合意に基づいて、技を華麗に魅せるための演技になっていると言わざるを得ない。

では実際に合気道技で崩されたらどうなるのか。まず、合気道技は上下の崩しを使って掛けるのが特徴である。そして、その基本に則って技を掛けていけば、仰向けと俯せのどちら側へ倒す技の場合でも、真下へ潰されるように倒されていく形になるはずである。その時、受けは前足を地面に縫いつけられて自己の全身を捉えられてしまうから、体勢の変化もままならずに、そのまま潰されていくしかなくなる訳である。その見た目は非常に地味であり、見ている人への評判もよろしくないだろうが、技とは派手で格好よければ良いものであっただろうか。ちゃんと崩せない技が万人に効くだろうか。

今回の研究会に於いて、繰り返し崩しについて代表師範から指導を受けた事により、私は自分が回転に頼って相手を振り回して崩そうとしている事に気づかされた。それは横方向への動きであって、先述した上下の崩しには合致しないものだ。私のやり方は恥ずかしながら合気道技の理合から外れてしまっていた訳である。とは言え、自分では上下の崩しを意識して稽古していたはずだった。しかし身体が相手の崩れに先んじて回転してしまう癖などにより、結果的に横方向への誘導が強い動きになっていたのである。更に回転する動きとは、回転する事によって自身が相手から逃げる形の動きになってしまう場合もあるとの事。「合気道は回転力だ」という意見を良く耳にするが、回転については使いどころを今一度検討してみる必要があると思った。

 

先述の気づきを踏まえ、今度は下へ落とす事を強く意識しながらやってみたのだが、今度は腕の力を使って落とそうとしてしまっていた。腕の力でやろうとすると自分が何をしようとしているかが相手へ伝わり、相手に抵抗するすべを与えてしまうから、崩せなくなるのである。それでも無理に崩し続けようとすると、相手の腕を引っ張ってしまい、更に腕の力に頼っていく結果となっていた。

しかし、そうして悩んでいる時に助かったのは、代表師範がちょくちょく回って来て下さり、言葉でアドバイスをするだけではなく、実際に技を掛けて見本を示して頂けた事であった。技を実際に体感する機会は、言葉で説明されるよりも、自分が次に何をすべきかを明確に判らせてくれるものである。しかしながら、どんなに丁寧に教えて頂けたからといって出来るようになるかと言えば、それはその後の取り組み次第であり、出来るようになるかもしれないし出来ないままかもしれない。やったのに出来ないままだった将来の自分を想像するとゾッとする所だが、やらなければ出来るようになる確率は確実に0%なので、今回のご指導に基づいて、新たな課題から逃げる事なく研究を進めていきたい。

 

今回の研究会は自分の身体に染みついた癖を見直すのにとても良い機会であったと思う。

自分の思い込みで誤った解釈のまま稽古を進めてしまっている事が、他にも結構あるのかもしれない。

皆様は如何だろうか。

<合気道S.A. 広報部>