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実戦合気道 広域指導者認定合宿レポート

令和3年11月6~7日実施


2021年11月6日(土)から7日(日)にかけ、立川近郊にて実戦合気道広域指導資格認定合宿が開催された。

全ての受講を終えてから思い返してみると、今回の合宿に於ける全体を通してのテーマは「末端へ力を入れないようにしたまま動作するには、どのようにすれば良いのか」という事であったと思う。

 

相手に技を掛けようとする場合、意識的であれ無意識的であれ、どうしても自分の力でどうにかしてやろうとしてしまう。例えば技を掛けた時、これから相手を倒すぞという所で、ふと自分の両手や両腕が思っている以上に力んでいるのを感じた事が無いだろうか。そうすると不思議なもので、相手は抵抗したいと思ったり、そのように思っていなくても、身体が自然に抵抗しようと反応するのである。そうなってしまうと、そこから先は自分の力と相手の力の真っ向勝負になり、拮抗して膠着状態になるか、力の強い方が勝つ結果となる。

もちろん相手より自分の力が強ければ、相手を倒す事が出来るし、一生力を鍛えて誰よりも力が強くなれば、相手が誰であっても倒せるのだから、何の問題もないだろう。しかし、世の中に於いて上には上がいるもので、自分より力の強い相手は必ずいるし、何より人間は日々老いていくから、自分の力もそれに伴って当然落ちていく事は避けられない。

 

別にそれでも良いです。自分は若いうちだけ戦えれば十分です。年取ったら引退しますから。という方も中にはきっといるだろうし、そういう道も否定すべきではない。意見も道も人それぞれであるので、合気道S.A.では、力によって掛かった場合も、技として認めている。なぜなら、力で掛けても相手が倒れたのであれば、それはその人の技として成立している、と言えるからである。力も技のうちという事だ。ただし、自分の技を掛けても相手が倒れなかったのなら、自分のやり方の何処かに原因があるからなので、その原因について考え直さなければならない、としている。

 

しかしながら、武道を志す人の大半は、若いうちだけの話にとどまらず、一生を費やしてその技術を研鑽し、高めていこうとしている方々であろう。そうなると当然、先述した「力」と「衰え」について頭を悩ませている方は多いのではないだろうか?そして自分の力が相手に通用しない時、それを補うものを必要とするはずである。確かに力も技のうちだが、技の本質とは、やはり力の差を補うものであると言える。

合気道S.A.に於ける「技」とは、ぶっちゃけて言えば、相手を崩す時に、抵抗したくなる要因を相手に与えないようにする方法である。そのためには自分の末端に力を入れないで動く事が大切になってくる。相手に自分の力が伝わってしまうと、先述の通り相手に抵抗感を抱かせてしまうからだ。

 

今回の合宿では、力まないで動作する術について説明を受け、基本動作から見直しがおこなわれた。技についても一通り稽古したが、どの技も「軽い技」を掛ける事が大切であった。代表師範の師である塩田剛三先生は、感覚的に技を実現出来てしまう天才であったが、その技は自分の力を相手に乗せていく形の、いわゆる「重い技」だったそうだ。「重い技」は相手に抵抗感を抱かせやすいが、塩田剛三の技は相手に対して有効だったので、技として成立していたと言える。「軽い技」とは、相手に抵抗感を抱かせないよう、相手に自分の力を感じさせないようにアプローチし、相手が抵抗出来る範囲である「壁」をつき貫けて、相手が気づいた時には、自身の崩れを回避出来ない状態となっているように技を運ぶ事で、相手が掛けからの重さを感じる事なく掛かる技である。

 

今回の合宿で実際に体験してみて、この技が使えれば、例え相手より力が弱くても、相手に技を掛けていけると実感出来た。ただ、相手の「壁」をつき貫ける技術は、話を聞いただけではまったくイメージ出来るものではなく、代表師範から実際に技を掛けてもらい、その感触からこそヒントを得られると感じたので、合宿や講習会に参加してみるのがスキルアップの近道になると言えるのではないだろうか。

とは言え、そもそも壁なんかつき貫けられるかと思うのが、聞いた時の反応として当然だし、自分も初めて聞いた時には疑問しかなかった。しかし、自分の身体で直に受けてみれば、壁をつき貫ける感触がその場でまざまざと感じられ、その技の存在を認める他なかった。

 

見ているだけ、聞いているだけでは何もわからないし、出来るようにならない。

自分で体感してみて初めてわかるのだ。

自分でやってみるために、何事もまず自身で体験してみる必要があるのではないだろうか。

<合気道S.A. 広報部>