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合気道組手講習会レポート

令和3年10月17日開催


2021年10月17日(日)立川近郊にて合気道組手講習会が開催された。

この講習会は合気道技を自由攻防の中で使うにはどうすべきかをコンセプトとしており、別におこなわれている『つき貫ける合気研究会』とは違った切り口から合気道技を学べるものである。

どちらの会も実際に受講してみて感じたのは、つき貫ける合気研究会は技の基本原理について研究する場であり、合気道組手講習会はその技をどのようにして実戦で使うかを研究する場であって、双方は表裏一体の関係にあるという印象だった。

 

今回の講習内容は「構えない合気道技の入り方」「相手の身体全体を崩す合気道技」「型に囚われない合気道技」であった。そしてそれらは、各項目に分けて研究していくのではなく、組手でよく使われる技を題材にして、それぞれの技ごとに全ての講習内容を盛り込んで、研究していくという形で講習会は進行していった。

 

今回取り上げられた技は、小手返し、肘締め、下段腕がらみの三種で、自分から見ても、どの技も組手に於いて多く使われている技であった。

 

自由攻防の中で合気道技を掛けるには、必然的に相手の側面へ入って技を掛けていくようになる。しかし、お互いが相手の側面を取り合ったり、相手を側面へ入らせまいとして向きを変えるような攻防になり、お互いが正面同士でぶつかり合う結果になってしまう事が多い。

少し違う話になるが、側面へ回り込む動きを説明する中で、お互いの力がぶつかり合って膠着状態になるのは、正面から双方の力がまともにぶつかっているからであって、側面に回り込んでの立ち回りが出来ていれば、正面から力はぶつかり合わないから、膠着状態になる事はあり得ないと師範は話していた。これも立ち回りを考えていく中で大切なポイントになると思うので、頭に留めておきたい。

 

話を戻そう。ではどうすれば相手の側面へ入っていけるのか。合気道技は相手の攻撃を受けてから反撃する「後の先」の技だと思われがちだが、実はそれだと技は掛からないという事をご存じだろうか。相手の攻撃を受けてからの消極的な対応では、相手を崩すには遅いのだ。むしろ自分から先に攻めていく「先の先」というのが、実は合気道技の本質なのである。

 

だから、相手の側面へ入る時にも、始めから側面へ向かって動いてしまうのではなく、自分から相手へ先に攻撃していくように、正面から踏み込んだ後、側面へ出ていくようにすべきであると言える。

なぜなら、始めから側面へ出る動きだと、相手から離れるように自身が後退する動きになるので、これは自分から攻める動きとは言えず、相手から逃げる形の消極的な動きになるから、相手がその動きに対して反応し、正面へ向き直って抵抗しやすくなるのである。

実際に自分でやってみても、正面から踏み込んだ方が確かに相手は反応しにくく、崩しやすくなるのを感じた。

型としての説明通りなら、ただ相手の側面へ踏み出すと考えるだろう。しかし、やってみると上記の通りである。この研究を通して、型は確かに大切なのだが、自由攻防の場面では型通りの動きだけでは、技が掛からない事も確かにあるのだと、身をもって感じた。

 

また、相手の側面へ入りやすくするには、「自分が構えない」という事も効果的になってくる。相手の構えに対して自分も構えると、相手は警戒して更に身構える。そこで自分が構えなかったならば、相手はこちらが何をしてくるか把握出来ず対応に困るため、身構えさせずに入っていけるにようになるのである。

 

そして相手の側面に入ったら、相手の身体全体を崩すように技を掛けていくわけである。せっかく側面へ入れても、末端にしか効かない技を掛けていたらどうなるだろう。末端を極めようとする力みが相手に伝わって、結局相手に抵抗されてしまうから、技は掛からないのである。

 

相手の身体全体を崩すような技の掛け方であれば、末端が力む事はなく、相手に伝わるものもないので、相手に抵抗感を抱かせない。だから、たとえ相手が始めから抵抗しようとする状況や、初動の崩しで崩れきっていない状況に於いても、技を掛ける事が出来るようになる。

そもそも自由攻防に於いて技を掛けるには、相手が技に掛かるまいと抵抗してくる事を前提に考えておかなければならないので、身体全体を崩す技は有効になってくる。

講習会の最後には、今回研究した内容を踏まえながら、参加者同士で組手をした。講習を受ける前と後では、組手に対する姿勢や、目のつけ所が明らかに変わっていた。自分が普段やっている組手に於いて、なぜ技が掛からないのかが少し見えたように感じられた。

 

自分で考えているが故に見えていないものがある。それを見つけるために、他人同士の目でお互いを見て、意見を交わしていく事は大切な機会だと思った。今後もこのような機会を大切にしていきたい。

<合気道S.A. 広報部>