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「つき貫ける合気」研究会レポート

令和3年8月29日開催


令和3年8月29日(日)、立川近郊にて「つき貫ける合気」研究会が開催された。因みに「つき貫ける」とは技の特性を端的に表した代表師範の造語である。

 

今回の研究技は小手返し、側面入身投げ、四ヵ条抑えであった。この研究会も取り上げる技が2周目に入り、内容が1周目と比べて、参加者がより理解しやすいよう、更に工夫された説明となっていた。

今回どの技に於いても、まずポイントの説明をし、そのポイントについて理解出来やすい技を通して研究。そしてその研究で覚えた感じを基に、違う技で応用するという形で、段階を踏んで進行されていった。

小手返しでは、「これだと肘まで」「これで肩まで」「これで腰」「これで膝」と言いながら掛けていくと、言葉通りその部位に対して明確に、力とも言えない何かが加わって極まっていくのを感じた。自分の思い通りの所へ技を掛けていける正確な身体の運用が出来る事を体験し、素直に凄いと驚いたのが印象的だった。

因みに力とも言えない何かとは、確かに何某かの力は加わっているのだと思うが、そこに「重み」が感じられないから、自分の身体がどう反応したら良いかわからないで抵抗出来ず、倒されてしまう感じとでも言おうか。何とも不思議な体験だった。

 

側面入身投げでは参加者からの疑問にも答え、それも柔軟に研究内容に盛り込んでいた。まずは直立した相手に掛けていくのだが、腕で押さず背中で掛けていくという研究だった。それが終わると今度は前傾して抵抗する相手に対し、同じように掛ける研究をした。

自分でやってみると、腕で押さないように気をつけていても、相手を倒したいと思う欲の表われなのか、無意識に上半身で相手を押していたので、結局相手に抵抗されてしまった。相手を押さずに掛けるという行為は、自分で想像する以上に難しいものだと思った。

四ヵ条抑えの研究だが、私にとってこれが今回一番の難関であった。四ヵ条の形に添えた両手の部分は忘れ、背中の力で掛けるというのがポイントだった。難関というのは、背中の力で掛けるから手には力が入らないまま掛けていくという点だ。自分でやってみた所、初めは軽く添えていたとしても、相手の力とぶつかった瞬間に自分の手にどうしても力が入ってしまうのだ。そして、手に力が入っていないまま掛けようとすると、今度はどのように力を出して良いか戸惑い、まったく動けなくなるという悪循環に陥り途方に暮れた。しかしその後、顔面突きを捌く所からの流れで技を掛けたら、止まった状態から技を掛けるよりも動きの糸口が見つかるような気がした。それでも手の力を抜く事は結局出来なかったが。

 

人がやっている事だから必ず原理はあるはずだ。色々な角度から研究し、経験を深め、時間をかけて答えを見つけていくべきだと思った。

今回の研究会で共通して出てきたのは「相手に触れた所は放っておいて背中側の力で掛ける」という事である。この一文を読んで「そうなんだ、じゃあ今度自分でやってみよう」と思う方もいるかもしれない。しかし、聞いただけだとやはり我流の域にとどまってしまう場合が殆どなのが事実である。その技を知りたいのなら、その技を実際に自分で受けてみないと解らないのだ。

しかしながら、代表師範は稽古中によく「相手が倒れれば良いよ」と仰っている。それは代表師範が伝えた事を守ってやっていようがやっていまいが、技を掛けて相手が倒れたのなら、それは技として認めるべきだという考え方である。ただし、相手が倒れなかった時は、自分の技に何らかの問題があるという事なので、考え直さなければならない。

そして、いわゆる壁にぶつかった時、人は我流へ走ってしまいやすくなる。それは我流の方が楽だからだ。しかし、楽をして身につけたものには限界がある。相手に技が掛からない時、自分は力で解決するのか?もちろん力でやって掛かったのなら、それはそれで良いと言える。でも相手が自分より力のある人だったら?

 

壁に対する解決策は言わずもがな「力」ではない。「技」である。そして相手との腕力の差に関係なく掛かる技を目指すなら、この研究会に参加して代表師範の「つき貫ける合気」を実際に自分の身で体験し、それを基に研究をしていく事をお勧めする。何故かはご自身で体験してみれば、その理由は理解される事だろう。

<合気道S.A. 広報部>