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オ-プント-ナメント実戦合気道選手権大会

令和2年3月20日開催


総評

左から山本選手・櫻井代表師範・永島選手
左から山本選手・櫻井代表師範・永島選手

令和2年3月20日、東京都八王子市近郊にて合気道S.A. 主催による“オープントーナメント 実戦合気道選手権大会”が開催された。

まず今回の大会では新型コロナウィルス騒動の影響で出場選手並びに大会関係者各位に多大なる御迷惑をお掛けした事を心よりお詫び申し上げる。

 

本大会においてはフリーの永島謙宗選手が初参戦となり、打撃系の選手が合気道の試合においてどのような戦いを見せるのかに注目が集まった。さて試合であるが…軽・中量級においては優勝候補の山本鏡明選手(合気道S.A. 八王子)が安定した危なげない試合運びを見せ順調に勝ち上がり優勝を決めた。無差別級においては注目の集まる永島選手が初戦で優勝候補の木村圭吾選手(合気道S.A. 品川)を判定で下しそのまま波に乗り順調に勝ち上がり、決勝戦ではこれまた優勝候補の田島尚樹選手(合気道S.A. 昭島)との激戦を制し一本勝ちで優勝を決めた。山本選手と永島選手の総合優勝決定戦となったが試合時間内に決着が付かず、両者の体重差判定により山本選手の総合優勝が決定した。

 

今回の大会において大活躍を見せた永島選手であるが、打撃技メインの選手にもかかわらずこの大会に向けてのシッカリとした準備をして来た事には驚かされた。打撃技メインの選手は戸惑いがちな大会趣旨やルールを十分に理解し、ルールに上手く対応し自分の良さを出し切った結果が故の無差別級優勝の栄冠であろう。

 

合気道S.A.における実戦合気道選手権大会ルールについては様々な御意見がある事は勿論承知の上であるが、このルールは“合気道技の実践”を目的に20数年に及ぶ大会を経て徐々に改良されていったものであり、今回の永島選手のルールへの順応は打撃系の選手であっても順応出来るという事の証左であろう。そもそも櫻井代表師範がS.A.の稽古体系に組手や試合を取り入れた理由は…型稽古の重要性は十分に認識しつつも、それだけでは合気道技の実践性が失われ形骸化してしまうのではないかとの危惧からであった。

初期の頃の大会においては様々な試みがなされ、フェイスマスクを着用しての顔面有りフルコンタクトルールを採用した事もあったようではあるが、その場合どうしても打撃がメインの戦いとなってしまい合気道技を出すより打撃で決まる・決めようとする傾向が強くなり、“合気道技の実践”を目指す代表師範の理念から遠く外れたものとなってしまったのであった。その為、打撃技の制限・膠着状態の脱却等々のルール改良が行われていったのであり、S.A.の試合は私見ではあるが極端な事を言えば“単純な強い弱いを決する為のものではなく合気道技の実践という理念を実現する為の実験場”のようなものであると考えるのである。

具体的な話をすると、“普段稽古している技が本気の戦いになった時に実際に使えるのかどうか”という事である。その理念を実現する為にS.A.の大会においては自流派のみならず他流派・他団体の参戦を広く認めているのである。勿論、S.A.ルールに従って貰う事が前提とはなるが“自分達の技が実際の戦いにおいて本当に使えるのかどうかを試す事の出来る最良の場”となる事であろう。皆様方の奮っての参戦を熱望するものである。

山本鏡明選手(左)永島謙宗選手(右)

保坂正彦選手(左)山本鏡明選手(右)


また今回の大会後においては代表師範による“つき貫ける合気”研究会が特別に開催された。“つき貫ける合気”とは相手に技を掛けようとして相手の力の壁にまともに当たってしまい相手に力が伝わらず技を返されてしまうとき、力の方向を変化させたりトリッキーな動作で無理やり相手に技を掛けるのではなく、相手の力の壁にある繊細な隙間から無理なく力を相手の体軸につき貫き技を掛ける合気道技の事であり、S.A.における長年の組手・試合経験の積み重ねより導き出された結論である。これは相手の抵抗や体格・体力・力の強さといったものに左右されない、それらを無意味としてしまう実践的な合気道技なのである。

 

今回の研究会においては…小手返し・四ヶ条抑え・上段腕絡み・側面入り身投げといった具体的な技についての研究がなされ、参加者は希望者については代表師範の技を実際に受ける事が出来、自身の技との比較や身体運用の違いというものを具体的に経験する事が出来たのであった。実際に頑張って抵抗している状態から代表師範にアッサリと抵抗を無意味にされ投げ飛ばされるという未知の経験をした参加者達には今後の稽古の指標・目指すべき方向性というものが見えて来た事であろう。

 

合気道S.A.ではこれからも“つき貫ける合気”研究会を定期的に開催していく予定であるので、この文章に目を通して少しでも興味を持たれた方々S.A.門下生は勿論、他流派・他武道にかかわらず物怖じする事無く積極的に奮ってご参加いただければ…と考える次第である。

中々得難い経験やこれからの稽古におけるヒントといったものが得られるかもしれない数少ない貴重な場であるのであるから!


試合結果

令和2年3月20日(日) 於 立川市近郊

  • 総合優勝   山本 鏡明 (合気道S.A.八王子)
  • 無差別級優勝 永島 謙宗 (フリー)