【このウィンドウを閉じる】 
合気道S.A. 野良犬フェス大会参戦記
参戦記(1)│ 参戦記(2)
【野良犬フェス大会参戦記】(1)
合気道S.A.の試合では、合気道における「戦いの間合い」、合気道技を使うにあたっての「正しい使い方」をどれだけ意識するか、意識できるかというところを攻防の大事なポイントの一つと捉えている。
試合という形式は瞬間的な攻防というものが連続で発生するため、力やスピードを競い合う形となりやすい。
だが、そうではなく瞬間的な接触の中で相手を崩す、投げる、極めるといったことが可能なのだろうか。

平成30年3月31日(土)、元キックボクサーの小林聡氏がプロデュースする野良犬フェスのリングに合気道S.A.の選手が出場した。
同大会は「世界の立ち技格闘技の祭典」を銘打っており、打撃の試合だけでなく幅広いジャンルの戦いを開催している。

今回は合気道S.A.の試合ルールを少し改変した「野良犬S.A.ルール」というものを櫻井師範が作成し、そのルールに基づいて試合を行った。
合気道S.A.の選手としては小柄ながら力もスピードのバランスの良い山本鏡明選手と、重量級の体格と連携技と側面に回り込む技術に優れた田島尚樹選手が出場した。

試合の前、櫻井師範の挨拶とルール解説が行われた。
基本ルールは合気道S.A.の試合ルールとなるため、相手の肘を抱え込む動作、横並びになって引っ張り合いを行う動作、ただ相手の動きから逃げるための離脱動作を減点対象とし、逆に相手に技を積極的に掛けに行くリスクを背負った動作を加点対象とするという事が説明された。

まず最初の試合は山本選手とムエタイのボーイOZ GYM選手となった。
この試合は打撃なし、首相撲ありの合気道S.A.ルールである。
開始早々ボーイ選手が大きく外側から力強くかけるように首相撲を仕掛けてきたのに対して、山本選手は合気道における天地投げで対応しようとし、ボーイ選手の体勢が崩れた場面があった。
また、首の後ろを取るように腕を巻き付けるようにしてきたものを、合気道の体捌きを利用して肩を使って切るような動作で、相手の優位となるポジションから逃れようとする動きも見られた。
しかしその状況を把握し、スイッチを入れ替えたボーイ選手は下横からコンパクトに腕を伸ばして一瞬で首相撲の体勢とし、体を入れ替えるようにして投げ倒す形に変更した。
これは、しっかりと首相撲の形をとってしまうと膠着が発生しやすく、すぐに「やめ」となってしまうというところと、山本選手がそれなりに対応しようとしていること、さらには力強くかけると合気道技が使えるタイミングも存在するというところをボーイ選手が判断し、対応して選択した行動だと思われる。

そしてそれは非常に有効であった。

選手同士が接触したその瞬間に施した技で相手を崩す、投げる、極めるといったことが出来るか? というのが合気道S.A.が試合を導入している理由の一つとして存在している。
ボーイ選手はまさに接触の際、首相撲の形に一瞬で持っていき、瞬時に投げ倒すということをやってみせた。
しかも打撃や足を絡める腰に乗せるという事を一切せず、触れた瞬間に首を中心に回転するように山本選手を投げ倒す。
激しくもつれ合った挙句、頭を打ち付けた山本選手が立ち上がれなくなる一幕もあったが、その後立ち上がり最後までボーイ選手と戦い続けるその姿は、確かに鍛え上げられた全身の力を感じさせた。
投げ自体では有効を取っていたが、その形に持っていくため組み手争いのような形で山本選手の手を何度も切るという離脱動作を何度も行ってしまったボーイ選手は最終的には注意二点の反則負けとなった。
また、ボーイ選手は「やめ」の後に投げるという行動をしていたのも減点対象となっていた。

とはいえ初めて合気道S.A.のルールを目の当たりにした観客には判定がわかりにくかったようで、櫻井師範によるルールについての説明がなされた。

その後、田島選手とプロレスリングゼロワンの横山佳和選手との闘いとなった。
どちらも90キロを超えるウェイトのぶつかり合いになるかと思いきや、しっかりとお互いがルールを守って返し技を掛け合うという意外な展開を見せた。
いつも通り合気道的な連携技や、動きの中で側面に回り込もうとする田島選手だが、横山選手はその外見とは裏腹に非常にしっかりとした隙のない身体運用を行っており、連携技で崩す事も横に回り込むこともさせない。
また、横山選手は大きく腕を伸ばしたり両手を広げていてもしっかり脇がしまっており、どのような動きにも対応できるであろうしっかりとした「構え」が身についていた。
にも拘わらず瞬間的なロープへの動きやラリアット気味の正面入り身投げを見せ、全身を連動させて動かす事に対して真摯に取り組んでいる姿が垣間見えた。
最終的にはラリアットを繰り出したり、田島選手の腕を何度も離脱したことで注意二点の反則負けとなってしまった横山選手。
普段やっている動きのほとんどが使用禁止となると、それは間違いなくストレスとなる。
しかしそのストレスに耐え、ルールを守って戦い抜き、見せ場まで作ってしまう。プロレスラーの地力の強さを感じさせた。
試合中に「これどうすりゃいいんだよ!?」と思わず叫んでしまっていたのが印象的である。

合気道S.A.のルールは常に危険と隣り合わせであった。
腰に乗せて投げると、もつれて下になった方が危険であり、体重差があれば落ちた個所によって内臓破裂、骨折、靱帯断裂、脳震盪といった深刻なダメージに繋がる事も多い。
背中から落ちれば背骨につながる運動機能を傷めてしまう事もある。
また、相手の肘を逆方向に曲がるように極めた状態で捨て身技をすれば肘が反対方向を向いてしまう。
相手の脇に腕を差し込み、脇腹が空いている状態にしておいて膝蹴りをすれば肋骨が折れる。
打撃に制限が少ないと、必ず蹴り合いとなりどちらかの骨が折れる。相手の動きを封じての打撃が無制限であれば当然のこと。

これらは実際に試合の中で発生してしまったものである。

櫻井師範はその都度選手や各道場責任者の意見などに真摯に向き合い、師範の理想とする技の掛け合いが行えるような形、かつ選手の安全に配慮した形となるよう、ほぼ毎年といっていい程どこかを修正している。
上記のようなものは全てルールで排され、危険な状態に入る前に主審によって止められるようになった。
その努力の甲斐あって2018年現在、合気道S.A.の試合で怪我をする人間は減っている。

合気道S.A.において試合とはあくまで技術の向上や昇華が目的であり、その時点での実力を単純に競って終わるという価値観ではない。
櫻井師範がよく稽古の際に口にする言葉がある。
「一生懸命動いて汗かいて頑張った!というような稽古ではなく、脳が汗をかくような練習をすることが重要」
この言葉は、試合においても同じことが言える。
現時点での力を出し切っての勝敗という結果は重要ではなく、あくまで各個人の「理想の動き」に対して試合という場での「現実の動き」という検証を行うことで、課題の発見、問題の克服といった次のステップに進むための稽古の一環だと捉え、日々の稽古に役立ててほしい。

相手の力量がわからなくても、日々の稽古で培った技術をもって試合場に上がった山本鏡明選手と田島尚樹選手。
特殊な制限の中で本来の力を発揮できないまま試合に挑んだボーイOZ GYM選手と横山佳和選手。
その向上心と勇気は、おそらく日々の生活の中でも発揮されているであろうことが伺えた。
参戦記(1)│ 参戦記(2)
【野良犬フェス大会参戦記】(2)
平成30年3月31日、新宿faceにおいて野良犬祭2が開催された。(野良犬祭についての説明は割愛させていただく)
この野良犬祭2に合気道SAから“山本鏡明・田島尚樹”の両選手が参加した。山本選手はムエタイのボーイ・オズ・ジム選手と“首相撲有り野良犬S.A.ルール”、田島選手はプロレスリングゼロワンの横山選手と“野良犬S.A.ルール”での対戦となった。

第1試合山本選手…
ボーイ選手は1ラウンドから手を下げた変則的な構えから予想通り首相撲を狙って来るのに対し、山本選手はそれを上手く捌きつつ合気道技を狙うという攻防が繰り広げられる。ボーイ選手の首相撲への入りのスピードとそこからの振り回し・投げに苦戦する山本選手。その攻防の最中、ボーイ選手の首投げを耐えようとした山本選手はそのまま絡んでロープに顔面を強打してしまい軽い脳震盪状態になってしまい暫し中断。その後再開されるもダメージが回復し切れてない様子で、相手の首相撲に苦戦しつつ第1ラウンド終了。第2ラウンド開始早々ボーイ選手が取られた手を引き抜く反則で“指導”を受け、それにより“指導”が累積6個となり反則負けとなってしまう。双方共に不完全燃焼状態での終戦となってしまった。

第2試合田島選手…
開始早々プロレスラー特有の圧力と懐の深さに苦戦しつつも相手のペースに惑わされない安定した自分の組手を行う田島選手。相手が手を取りに来るのに対し2ヶ条、体を躱しての肘締めを狙うが中々極め切れない。第2ラウンド、横山選手はロープに飛んだりとプロレスラーとしてのパフォーマンスを入れつつ撹乱を狙うが田島選手は崩れない。両選手様々な攻防を繰り返すが互いに中々極め切れず、そんな中、業を煮やした横山選手が反則覚悟のラリアート攻撃に出る。これが田島選手の顔面に入り“注意”を受け、“指導”が累積していた横山選手の反則負けとなってしまう。後に横山選手側からの抗議でラリアート自体は“有効”となるが反則負けは変わらず。

この2試合を観戦して感じた事は(先輩も仰っていた事では有るが)相手の攻撃を受けてから攻めようとしても、相手の体力・技術が下のレベルの場合には自分の形に出来るが、そうでない場合には中々思うように自分の形には出来ないという事であった。実際、スピード・体幹に優れたムエタイ選手には容易に首相撲に入られてしまいそこからコントロールされ投げに行かれたり、組み合い・懐の深さに優るプロレスラーにはその間合いを制されてしまい膠着した状態となってしまった。この辺りについては、ここ数年オープントーナメントにおいて他武道・他格闘技からの参加が無く合気道他流派やS.A.内での戦いが多く、互いに技を知り尽くした者同士の戦いが多かった事による弊害が出たものかとも思われる。

そもそも合気道S.A.の試合というものは単純な勝敗や強弱を競うものではなく、主に合気道技の実践・向上を目指して行われており、その目的の為に代表師範によるルール制定が行われている。その為にどうしても他武道・他格闘技からの参加については色々と縛りが多くハードルの高いという事実も否めない。とはいえ初期の頃のように打撃や投げをある程度広範囲に認めてしまうと打撃のみ・投げのみの戦いに終始する事になってしまい、合気道技の実践・向上という本来の目的とはかけ離れたものとなってしまうのは既知の事実である。
この辺りは本当に悩ましい難しい問題ではあるが、敢えて誤解を恐れずに言うならば…これから先、他武道・他格闘技がより参加し易く、また野良犬祭のような観客の入る興行においても観客にも分かり易い特別ルールによる試合というものが必要となって来るのではないかとも感じた。これは既存の合気道という武道に組手を取り入れ、現在も尚現状に満足する事無く、歩みを止めない進化する合気道としての合気道S.A.だからこそ可能な事ではないか。またそうする事により、より多くの方々に合気道に興味を持っていただき、合気道の素晴らしさも理解していただけるのではないかと考える次第である。

<合気道S.A. 広報部>
【このウィンドウを閉じる】 
国際実践合気道連盟「合気道S.A.」